教育振興基本計画2

皆さんこんにちは。

令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。

そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。

特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。

本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。

Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望

(1)教育の普遍的な使命

教育は、国の根幹を支えるものであると私は思います。ですが、教育に力を入れたら明日突然国をよくする人材がたくさん出現することにはつながりませんし、教育に手を抜いたら明日突然国がどうしようもなくなるということもありません。結果が出るにはとても時間のかかるものだと思います。

小学校1年生が大学を卒業するまでには、16年間程度教育を受けることになります。そこで、どのような教育が実施され、どのようなことを身に付けるのか、国が大枠を示し、「教育基本法の理念・目的・目標・機会均等の実現を目指す」ことが大事だと述べられています。

また、「教育振興基本計画は、「不易」を普遍的な使命としつつ、社会や時代の「流行」の中で、我が国の教育という大きな船の羅針盤となるものと言えよう。」とあります。ずっと変わらない教育の本質(例えば、日本国内のどこに生まれてどこに住んでも教育の機会が均等であるなど)と、流行とを両方きちんと考えて実施していくことが大切ですね。この教育振興基本計画は、そのような立ち位置にある、と言っています。

(2)第3期計画期間中の成果と課題

続いて、第3期計画の成果と課題、ということが述べられています。

成果として挙げられているのは以下の通りです。

初等中等教育段階
  • PISA 等の国際調査において、高い学力水準を維持
  • GIGA スクール構想により1人1台端末と高速通信ネットワーク等の ICT 環境の整備が飛躍的に進展
  • 小学校における 35 人学級の計画的整備
  • 高学年教科担任制の推進等の教職員定数の改善と支援スタッフの充実
  • インクルーシブ教育システムを推進するため、通級による指導に係る教員定数の基礎定数化
  • 教職課程における特別支援教育に関する科目の必修化
  • 外部人材への財政支援の拡充
高等教育段階
  • 大学の認証評価のための法改正
  • 全学的な教学マネジメントや質保証システムの確立
  • 高等教育機関の連携・統合のための体制整備
  • 大学設置基準の改正
その他
  • 幼児教育・保育の無償化
  • 高等学校等就学支援金の充実
  • 高等教育修学支援新制度の導入

一方、課題は山積みです。どこの時代のどこの世界でも大概課題は山積みですが、今回は以下の課題が書かれています。

  • 留学をはじめとするグローバルな人的交流が激減
  • 体験活動の停滞
  • いじめの重大事態の発生件数や児童生徒の自殺者数は増加傾向
  • 不登校児童生徒数は増加
  • 依然として長時間勤務の教職員が多い
  • 教員採用倍率の低下や教師不足
  • 地域学校協働活動の自治体間・学校種間で差
  • 子育てに不安を持つ保護者が多い
  • イノベーション人材をはじめとする高度専門人材の不足
  • 労働生産性の低迷
  • 社会人の学び直しが十分に進んでいない
  • 教学マネジメントの確立に向けた具体的な取組の進展について大学間の差
  • 博士課程進学率が低い傾向
  • 学校施設について、老朽化の進行や多様な教育内容・方法等への対応

これらのことは、それぞれが単独で解決できるものではなく、お互い関係性があって、簡単に解決できるものではありません。そもそも素人がちょっと考えて簡単に何とかなるようなことは課題にはならないのです。

ですので、それをどのようにしていくか、多くの人の知見を集め、今後解決していくために、教育振興基本計画が策定されています。

来週は教育振興基本計画の続き、社会の現状や変化への対応と今後の展望について読んでいきます。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。