教育振興基本計画8
皆さんこんにちは。
令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。
そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。
特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。
本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。
Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針
②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進
共生社会の実現に向けた教育の考え方
誰一人取り残されない、というのは、小さな努力の積み重ねです。小さな努力を、たくさんの人が実施して、少しずついろいろなことを分かち合う、ということが必要ですね。
ここで課題として認識されているのは
- いじめの重大事態の発生件数や児童生徒の自殺者数は増加傾向
- 不登校児童生徒数が増加
- 児童虐待
- ヤングケアラー
- 貧困
- 肥満・痩身
- アレルギー疾患
- メンタルヘルス
- 特別支援教育を受ける障害のある子供は近年増加傾向
- 医療的ケア児や病気療養中の子供に対する支援
- 性的マイノリティ
- 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援
- 我が国で学ぶ外国人の子供
- 海外で学ぶ日本人の子供の学び
と、多岐に渡っています。多岐に渡っているので、「誰一人取り残さない」について、それぞれに適切なケースを考えなければならないということですね。それは誰か一人がなんとかする、というには荷が重すぎることです。学校でも担当の誰それが頑張る、ではとても追いつきませんね。
誰かほかの人が考えてくれる、ではなく、自分事としてみんなで考えていかなければならないことです。
計画では「一人一人のニーズに合わせた教育資源の配分を行う」とあります。どんなものも無尽蔵にあるわけではありませんから、どのように配分するか、ということはとても大事です。それが、公平で公正になるようにという考え方は重要ですね。定量的に全員一律同じだけ、というのではいけないということもだいぶん社会に浸透してきていると思います。有名なのは以下の図ですね。
Interaction Institute for Social Change | Artist: Angus Maguire
interactioninstitute.org madewithangus.com
定量的に一律で同じ支援を実施する、ということが今まで考えられてきたことが多かったように感じます。ですが、人は多様であり、必要な支援の量も種類も人によって違います。このような考え方をできる人が増えていくといいですね。
生まれた場所や環境によって受けられる教育が変わらない、ということも重要です。自分がその立場に立たないと人間なかなか理解が進みませんが、多種多様な人が多種多様に生きている、ということを念頭に考えていくことが大切です。
計画では「これまで学校では「みんなで同じことを、同じように」することを過度に要求され、「同調圧力」を感じる子供が増えてきた」という記載もあります。
「一人一人が自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する共生社会を実現していくことが求められる。」ともあります。
何度も大切なことなので繰り返し言われていることです。それくらい日本人には強固な「出る杭を打つ」認識が残っているとも考えられます。
認識を変えられるのは教育の力です。教育振興基本計画で、価値観の転換を図るために必要なことが述べられているのは適切な場所での表明だなと思います。
来週は教育振興基本計画の続き、②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進について読んでいきます。
投稿者プロフィール
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株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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