教育振興基本計画13

皆さんこんにちは。

令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。

そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。

特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。

本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。

Ⅲ.今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方

(1)教育政策の持続的改善のための評価・指標の在り方

何か一つ決まったら、それを愚直にずっとやり抜く、ということはよい面もありますが、そうではない面もあります。世の中の流れは速いですので、例えば1ドル80円の時代と150円の時代で輸入品を同じ値段で買うのは不可能ということはわかりますね。

なので、何かを決めた後、ずっとそれを見直さずにいる、というのはおかしなことです。学習指導要領や教育振興基本計画、情報セキュリティポリシーに関するガイドラインについても見直しがされ、よりよいものにバージョンアップされていっています。

そういうわけで、どのようなことでも、一度決まったことを実行して、それを改善するために・現状を正しく認識すること・適切な評価指標を設定し、評価を実施すること・その評価をもとに改善をすること、が重要です。

計画では様々な留意点が挙げられています。

  • 法令を遵守
  • より効果的・効率的な教育政策の企画・立案等
  • 国民への説明責任
  • 客観的な根拠を重視した行政運営に取り組む

特に最後の「客観的な指標」はエビデンスが必要だ、ということでよく話題になりますね。ただ、計画には以下のような注意も挙げられています。

  • 他の政策分野と比較して、成果が判明するまでに長い時間を要するものが多い
  • 成果に対して家庭環境など他の要因が強く影響している場合が多く、政策と成果との因果関係の証明が難しいものが多い
  • 教育政策は、幼児、児童、生徒及び学生の成長や可能性の伸長等を目指して行われるものであって、一人一人の様々な教育ニーズを踏まえた教育活動が行われている。このため、成果は多様であり、その評価は多角的な分析に基づくべきものであることに留意する
  • 数値化できるデータ・調査結果のみならず、数値化が難しい側面(幼児、児童、生徒及び学生等の課題、保護者・地域の意向、事例分析、過去の実績等)についても可能な限り情報を収集・分析し、あるべき教育政策を総合的に判断して取り組むことが求められる。
  • 定量調査のみならず、定性調査を含めて調査手法を検討し、把握・分析を行っていくことが重要

難しいですね。なんでも、実行した→成果が出た! ということを期待しがちです。ですが、教育というのはそううまくいかない、と計画は述べているわけですね。例えばおそらく 減税した→消費が増えた! はすぐ効果を実感できそうです。これはきっと政治家も国民もやる気が出てきます。

でも、教育にお金をかけた→成果が出た! はとても長いスパンで見ないとわからないものです。何かをお金をかけて導入して詰め込んだら学力が上がりました! ならどんな人間もテスト前に苦労しないでしょう。

だからと言って、教育にかけるお金を削って、ほかのすぐ成果がでるものに充てる、というのは絶対してはならないということを強く思います。すぐ成果が出るものしかお金を得られないなら、文化も芸術も科学も廃れていくことでしょう。それらは生きていくのに必要ではない、という意見もあるかもしれませんが、漫画も本も歌もなく、ゲームもない生活をいまさら私たちは送ることができるのでしょうか。

教育を行うということは、人類全体を豊かにしてくれるための投資です。心も、身体も、教育を受けることで豊かになります。「足し算を知っていればお店に行って間違った金額の時にきちんと理由を述べて反論できる」ということは、とても大事なことです。「なんかわからんけどおつりごまかされた!! わーわー!!」と騒ぐだけでは、なかなか共感を得られないでしょう。

教育は国の礎です。それを効果的に効率的に実施するために計画が立てられています。工夫して実現していくために、何が必要なのかなど議論を重ねていきたいですね。

来週は教育振興基本計画Ⅲ.今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方の続きを読んでいきます。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。