教育振興基本計画14
皆さんこんにちは。
令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。
そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。
特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。
本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。
Ⅲ.今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方
(1)教育政策の持続的改善のための評価・指標の在り方
(教育政策の PDCA サイクルの推進)
教育政策は、今日やって明日結果が出る、という性質のものではありません。だからこそ、国民に広く理解を求め、「今すぐに効果は出ないが、国家100年の計には必要だ」ということを知ってもらう必要があります。
計画では「意義を広く国民に伝え、様々な社会の構成員の参画の促進等を図るためにも、目標の達成状況を客観的に点検し、その結果を対外的にも明らかにするとともに、その後の施策へ反映していくことで実効性のあるPDCA サイクルを確立し、十分に機能させる必要がある。」とあります。
理解してもらうだけではなく点検し、点検した結果を広め、計画を修正していくということが必要です。先回にも似たようなお話をしました。
また、計画には「国と地方公共団体が適切な役割分担の下に互いに連携・協力をしたり、それぞれの地方公共団体が相互に情報交換等をしたりしながら、取り組んでいくことが重要」とあります。一自治体で頑張っても無理ですし、国だけで頑張っても何ともなりません。
教育とはみんなで頑張って実行していくものである、という認識を持つことが必要です。先生だけ、学校だけ、教育委員会だけ、文部科学省だけが頑張っても、何ともならないというのが今の状況です。
(教育政策の企画・立案段階)
企画・立案段階では、「政策の目標と具体的な施策を総合的かつ体系的に示すことが重要である。」と計画にはあります。どんなに素晴らしいことであっても、今までどのような経緯があって、どういうことが必要だから、こういうことを目指したい、ということは何回繰り返し言ってもいいことです。
また、「不確実性が高く変化の激しい時代においては、複雑かつ困難な社会課題に適時的確に対応することが求められており、政策実施後に状況に応じて柔軟に見直しを行うことができる仕組みを立案段階で組み込むことが必要」ともあります。その通りですね。
このブログでも度々言及していますが、5年前に新型コロナウイルスの蔓延で世界が止まるなどということは考えられないことでしたし、3年前にchatGPTがここまで便利になっているとは想像できなかったことでしょう。
ですので、柔軟に見直すことをもともと考えておく必要があります。一つ決まったことを金科玉条のように永遠に守り抜く、という時代ではなくなっています。
(教育政策の実施段階)
実施段階では「客観的な根拠を重視した施策を展開」する必要があります。なんとなくいいと思った、勘がそう告げている、などということでものごとは進まないということです。
また、そういうと、「数字で表れない成果がある」ということは必ず話題になります。ですので計画も「教育活動の多様な成果を多角的に分析するとともに、数値化できるデータ・調査結果のみならず、数値化が難しい側面も含め、現場感覚を持って的確に状況を把握し、そこから得られた問題意識や政策ニーズを適切に反映させた企画立案等を行うことのできる行政職員を育成する」と書いています。「行政職員を育成する」という表現が、今後を見据えたものだなと強く思ったのですが、学校の先生がそれらを実施するのではなく、自治体の職員が教育委員会を「よそ者」とせず、自分事としてとらえる機会が増えるのはとてもいいことだと思います。
また、学校現場へのフィードバック、自治体間の情報共有にも言及があり、従来課題と捉えられていた事柄が認識されているのだなということも思いました。
(教育政策の評価・改善段階)
評価は、単純に一つの指標だけで見るのは危険だ、ということは皆さんお分かりいただけているでしょう。それではどのような指標、視点が必要かというと、「関連の深い複数目標間で達成状況を比較したり、相関関係を分析したりするなど、目標横断的な視点からの分析にも留意する必要がある。」と計画にあります。
単一の物事の評価も必要ですし、関連した物事の評価も必要だということですね。
また、「同種の評価や調査等が重複し、施策担当や教育現場の負担が過度に生じることのないようにすることが重要である。また、調査内容の見直しを含め、適切なデータ収集に努めること」とあります。調査が教員の負担になっているということは話題になっていますね。文部科学省の調査は本質をとらえようとするあまりとても細かく難しい場合があります。(そしてあまりに難しいと、きちんと答えることができません)塩梅を見よ、ということですね。
(客観的な根拠を重視した政策推進の基盤形成)
「総合的・多角的な情報分析に基づく政策立案等のための基盤づくりのため、多様な分野の研究者との連携を強化しつつ、国による調査の内容・方法の抜本的改善等に取り組むとともに、オープンデータを推進することが必要である。」
とあります。多様な分野の研究者との連携は特に重要だと考えます。
日本では、様々な分野の研究が詳しく行われているのに、それを有機的に統合し、政策立案に活かす、ということが少ないように感じています。それは非常にもったいないことです。オープンデータを推進することで、思いもよらないところからそのデータを分析する、ということはあります。人間が多く集まると、いろんな知恵が出てきます。それを活かしていく必要があります。
来週は教育振興基本計画Ⅲ.(2)教育投資の在り方を読んでいきます。
投稿者プロフィール
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株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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