諸外国と比較した日本のICT教育の現状とGIGAスクール構想

今回は諸外国のICT教育と日本のICT教育がどの様に違い、何が問題になっているのか、そこにGIGAスクール構想を導入するとどのような変化が起こることが予想されるかについて書かせて頂きます。

諸外国と日本のICT教育

日本のICT教育は他の国と比べて遅れているのでしょうか? これは残念ながら、遅れていると言わざるを得ないのが現状です。

イギリスではICTという科目が実施されていましたが、2015年からコンピューティングというより具体的な科目として見直されて初等教育から実施されています。
他国でも初等教育から必修科目となっている国が多くあります。
日本は2020年から初等教育の各科目においてプログラミング学習が実施されることになりましたが、他国と比較してもかなり遅い実施となります。

また、「プログラミング」という科目が実施されるのではなく、「各教科の一部で」プログラミング学習を行うという形の実施となります。

各教科でプログラミング教育を行うということは、あくまで各教科の一部を学ぶことであって、プログラミングという教科を学ぶということではありません。プログラミングの授業を専門とした先生が教えるのでは無いため、授業によって学習内容に差が出てしまうことが考えられます。

一部には、小学校でのプログラミング教育の効果が曖昧なままであれば、中学校でのプログラミング教育において、小学校での学習を前提に考えることができないのではないかと問題視する声もあります。*1

こういった問題にどうすれば対処できるのか考えてみると、まず、イギリスの様にプログラミング学習を教科として扱い、専門の人材を確保することが挙げられます。

もう一つ、先生方のICT教育の指導力を一定以上に確保することが考えられます。専門の人材は、現場でも待ち望まれていることだとは思います。ですが、イギリスのように「コンピューティング」を教えることのできる人材は現在育成できている状態とは言い難いですね。

ここでは、現行の学習指導要領に則って先生方のICT教育の指導力の指導力の確保を解決策として、そのためにはどうすれば良いのかを考えてみます。

ICT教育の指導力を向上させるには

ICT教育の指導力の向上には、授業の準備や指導方法の習得など、先生がそのために時間を割かなければなりません。しかし、OECDの調査の結果、日本の小学校、中学校の先生は調査対象国の中でも最も勤務時間が長いことがわかっています。*2
これはICTを用いた指導の習熟に時間が使われているのではなく、事務的な手続きが多すぎることや、課外活動の指導の時間が長いことが原因であるということも調査によってわかっています。*2

また、OECD諸国の中でも、ICT教育の実施に不安を持つ先生の割合が非常に高く、授業にICTを取り入れるのに十分な授業時間を確保している先生の割合も非常に低くなっています。*3
更に、十分な資格を持つ技術補佐員のいる学校の割合はOECDの中でも日本が最下位です。*3

ここで一人1台の端末を学校へ導入するとどうなるでしょうか。恐らく先生がICT指導の習熟のために割く時間がない中で、きちんとしたICT教育が全国で行われるようになるのが難しくなることも考えられます。先生は今までの校務と授業を行うので手がいっぱいだからです。

ではどのようにして先生がICTを用いた授業方法を習得すれば良いのでしょうか。そのためには、先生にICTを用いた授業を伝えられる人間を外部から取り入れることがひとつの解決策として挙げられます。子どもたちに教えるのは先生ですが、先生に教える専門人材を取り入れる、ということですね。

GIGAスクール構想では、4校につき一人のICT支援員を配置することになっています。そのICT支援員が、授業に支援に入る形でICTを使った授業を実施する先生のご不安を取り除くのです。日本の先生方は、学校運営チームメンバー以外の人間から学び、指導改善につなげている割合が諸外国よりも高いことがわかっています。*1

そして、そのためにはICT支援員も、先生方のパートナーとしてのスキルを持った人材であることが必要です。単にICTを使うのが上手な人、一から十まで全部やってあげる人がICT支援員になるのではなく、ICTを利用して、効果的な授業を行うにはどうしたら良いか、事例をきちんと知っており、それを上手く先生に伝えられる人材がICT支援員になる必要があります。

弊社は20年以上に渡り、教育の現場で先生が授業でICT機器を用いることをサポートしてきました。そして現在もどうすれば先生方がより効果的にICTを用いた授業をできるのかを模索し、経験を蓄積させています。
この蓄積させた経験を使い、先生方を助け、子供たちのためにより良い授業を提供する一助になりたいと考えています。

諸外国と比較した日本の教育への支出

これまで、日本は先進国の中でも政府支出における教育への支出割合は低く、OECD平均と比較してもかなり低い水準にありました。

政府支出における教育への支出割合
<参考資料>
図表でみる教育(Education at a Glance)OECDインディケータ C章 教育への支出
C4 公財政教育支出
(EXCEL:163KB ※OECDウェブサイトへリンク) Figure C4.1.
(最終閲覧日2020年9月28日)

それがGIGAスクール構想によって予算を投じられ、変わろうとしています。

少ない予算の中で、日本がこれまで国際的に見て高い学力を維持してこられたのは先生方の努力の賜物です。そこに予算が投じられ、官民一体となって問題に立ち向かうことが出来れば、ICT教育の遅れという問題の解決に向かうことができるのではないでしょうか。

<参考資料>

*1 日米英の情報教育政策等から考察する将来を見据えたIT人材育成について : 初等中等教育におけるICT教育を中心に(最終閲覧日2020年9月28日)

*2 OECD 国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書vol.2のポイント  (PDF:1,263KB)(最終閲覧日2020年9月28日)

*3 OECD 2020 年 新型コロナウイルス感染症パンデミックへの教育における対策をガイドするフレームワーク(最終閲覧日2020年9月28日)

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