ICT支援員からの相談③
こんにちは、ICT営業担当のMです。今回も前回に引き続き現場で活躍するICT支援員からの相談をY先生に答えていただきます。前回まで様々な相談をY先生に答えていただきました。情報/ICTには多様性がとても大切であることを知りました。
M:Y先生、今回も引き続きICT支援員からの相談にお応えいただければと思います。
Y先生:よろしくお願いします。
M:Tさん、サポ―トしている中でこういった感じならいいのにな、と思うこともありますか?
T:指導案を見させて頂くことがありますが、もう少しここに時間を置いたら子どもたちが理解できて楽しくできるのにな、ということはありました。ただどちらかというと「支援員がサポ―トに来てくれるなら内容についてはお任せしたい」、ということの方が多くあるので「それでいいのかな」ということが気になっています。
Y先生:私の自治体では今私がこういうICTを推進・活用・指導する立場になっているため市のレベルで方向性を決めてしまえたことが良かったと思います。大学という外部の方の知識・協力を得て教材も作れました。ここまで向く方向が決まっているのであればいいのですが、どちらかというと支援員にやり方を聞いてお任せしてしまうことの方が多いのではないかと思います。
M:実際のところはそうですよね。先生の方で自分でこういう風にプログラミング授業を行おう!ということを決めるのは難しい部分もあると思います。
Y先生:できることならば市のレベルでどういった授業を行っていくのか、方向性をしっかり決めておかないといけないのではないかと思います。指導案を作るにしても、子どもたちのパソコンスキルを見届けた上でそれに合ったものを作ることが大事です。ネット等にあるようなものを引っ張ってきてそれをそのまま使うようなことは失敗する元なのでやめたほうがいいと思います。
M:たしかに既に字が読めることが前提だから算数の文章問題を解くことができますがキーボードの打ち方も分からない状態で指導案通りに進めるのは危険ですよね。
Y先生:私が授業をした時の出来事ですが、一番最初にアカウントのログインがあったんですね。その際に小文字の”h”の入力が共通で必要だったんですが、「先生、小文字の”h”はどこにあるんでしょうか?」って聞かれたんです。キーボードには全て大文字で書かれていて小文字ではないため、子どもには分からなかった、ということがありました。
M:ああ!確かに”H”は”h”であることは私たちにとっては当たりまえです。
Y先生:ここまではできるだろう、という前提で授業を構成するとこういった思わぬことが起こります。ですから、その実態を確認した上で指導案を作る必要があるんです。子どもたちがどこまでのスキルを持っているのか等の情報が何も無い状態でどこかにあった指導案を持ってきてこの通りに進めていきたいです、という話になっても上手く授業が流れていかなくなってしまうんですね。
M:なるほど。子どもたちがどれだけICTリテラシーがあるかなんてわかりません。
それらの情報があってこそ、「指導案」を作成できるということなんですね。
Y先生:ポイントとしては、「指導案」として作られているのであれば必ず「ねらい」と「評価」が書かれているはずなので、それを確認し、何回の授業でそれに辿り着ければいいのかを考えればいいと思います。
M:「ねらい」ですか。
Y先生:はい。「その子の実態」をみて、例えば先ほどのキーボードの入力がままならない状態から進めようという場合、今日の「ねらい」には恐らく辿り着けないだろうということはすぐに分かると思います。そのため、「最終的なねらいに辿りつくためにはいくつかのステップがあり、現在この状態なので今回はここまでのステップにしませんか?私が来ない日の授業は特にこの子についてこういうふうに見てあげれば追いついてくれると思いますよ」という子ども重視の対応をICT支援員には期待したいです。
M:「指導案」をみて「ねらい」を確認して、なにより「その子の実態」を見たうえで、提案する。とても大切ですよね。ちなみにKさんとTさんは実際に支援現場でそういった経験をされたことはありませんか?
K:先生が「ねらい」としてクラス全体のタイピングスキルを向上させたいとの相談を受けたので、指のポジションなど詳細な解説もついているタイピングサイトを紹介したところ、先生が教室のパソコンを開放していつでもタイピング練習ができるようにしたんです。
M:すばらしいですね。
K:先生が好きでやられていたことなのですが、パソコンが1台しかないので、キーボードを形取ったプリントを作って、それにホームポジションからどの指でどのキーを押すといいのかなどを色付けしたものを配っていました。ただ、その先生はそういったことが好きなのでやっておられましたが、それを他のクラスでやろうとすると他の先生への負担になってしまうのでなかなか難しい。結果、そのクラスだけがタイピングスキルが向上するという形になりました。
Y先生:学校特有の悪い癖が出てしまっていますね。先生は自分で教材を作ったりやり方を模索したりすることが多く、自分のやり方というのを強く持ってしまう傾向があります。そのため「共有する」ということをあまりされないのが現状です。可能であればサーバー等を使い、市内全学校で共有する場所を作って教材を共有すればすぐに解決できると思うんですけどね。
M:教材共有はとても大事なのに自治体によっては、ハードルが高いこともありますよね。本当に学びになるのか審査があったり、必要書類を出さないといけないとか……
Y先生:今だとクラウドで簡単にオフレコで共有できるんですけどね(笑)
M:勝手にクラウドで共有したら怒られそうです。
Y先生:ただ、本当は自分で作った教材を共有できれば、自分の教材の欠点についても分かるので、見る人にとっても自分にとってもとても良いことなんですがね。
M:たしかに……。
Y先生:おそらく、そういった教材共有のハードルが高い自治体では共有したい教材だけでなく指導案を添付したりする、という昔からのやり方なのだと思います。そういったしっかりとしたものは1年に1、2回正式に行っていただき、それとは別に実務ベースでの共有方法ができるように考えて頂きたいものですね。
M:まさに事件は現場で起きている、ということですね。
Y先生:そういうことです。気楽に使えそうならどうぞ使ってください、程度のものでいいんですよ。先生が見て気に入ったんならそれを使えばいい、くらいの気概で共有できるようになって欲しいものです。
M:「指導案」と言ってしまうから固くなってしまうんですかね?LINEで「こんなことしたらめっちゃよかったよ!」くらいの感覚で共有できればいいですよね。
Y先生:そのとおりです。「指導案」は確かにしっかりしたものでないと外から見たときの体裁が整わないかもしれませんが、「教具」については自由だとおもいます。実はそういった “eTeachers”という全国の先生で作成した教材を共有することができるサイトがあります。そういったものを利用するというのも一つの手ではないでしょうか。
M:こういったものを使えると非常に便利ですね。例えばICT支援員として、こういう便利なサイトがあるので一度使ってみることも良いかもしれませんね、という話もできそうですね
Y先生:こういった情報を支援員同士で共有しておくことも大事ですね。どんなことがあったのか、といったものや対応内容をイントラネット内で共有されているとは思いますが、こういう便利情報も共有しておくとお互いの資産になり、それがどんどん積み重なってより良い支援員になっていけると思いますね。
M:そろそろお時間になりましたので、最後に先生から何か一言をお願いしたいと思います。
Y先生:私は終始一貫していて、「子どもによって違う」ということを貫き通して欲しいですね。ICT支援員だからこそできる「本当に子どもに寄り添ったものをやり続けて欲しい」というのが私の願いです。きっと今までとは違った喜びが味わえると思います。10年後20年後にその子どもがITにとても詳しい仕事をするようになって、「おぉ、よく成長したな」と思えるように種を蒔く仕事、国を支える仕事だと思って頑張って頂きたいですね。ありがとうございました。
M・K・T:ありがとうございました。
以上、3回に分けて現場で活躍するICT支援員からY先生への相談を掲載させていただきました。ICT支援員は先生と子どもをICTで繋げる大切な仕事なのだと改めて感じました。
今年度月一で連載をさせていただきましたY先生シリーズですが、ITCE1級のO、現場で活躍するICT支援員のK、T、そしてなによりY先生。本当にありがとうございました。
来年度はGIGAスクール構想が本格運用されます。私は営業、O、K、TはICT支援員として、Y先生は先生として、子どもたちのより良い学びのために連携していきたいと思います。
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株式会社ハイパーブレインです。
教育の情報化に貢献し,豊かな会社と社会を作ります。
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