デジタル庁「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」のご紹介2
前回は、デジタル庁の実施したアンケート「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」について、どのようなアンケートなのかをご説明させていただきました。
今回は、子供たちへのアンケートでどのような意見が集まったか、アンケート結果を分析して何がわかったかについてご説明させていただきます。
子供たちがどんなことで困っているか
子供たちが困っていることについてのアンケート分析の結果は、下図のようになっています。
<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P4
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)>
この結果から、小学生から中学生、高等生と、発達段階が高くなるにつれて、リテラシー面で困っている割合が減り、通信環境面で困っている割合が増えていることがわかります。
(高校生のリテラシーの割合が高くなっていますが、これは高校生からの「端末を持っていない」という意見がリテラシーに含まれてしまっているため、割合が高くなっています。)
次に、自由記述の回答内容から単語を切り出し、上位60位までの単語について分析を行った結果を見てみましょう。
<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P5
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)>
この分析結果を見てみると、小学生は入力方法に関する単語が多くありますが、中学生になるとほとんど無くなり、高校生で見られなくなります。逆に、接続・通信環境に関する単語は小学生が少なく、中学生、高校生と発達段階が上がるにつれて増えています。また、使用規則・利用制限で困っている児童生徒はどの発達段階でも一定割合で存在しています。
それでは、これらを解消するにはどうすれば良いでしょうか?
リテラシー面で困っている児童生徒に対しては、はじめは文字入力の方法や、ログインしてみることからやってみて、少しずつ慣れていってもらう等の取り組みが有効です。
また、最初は小学生を少人数のグループに分けて、休憩時間を活用して指導するという事例(外部サイト)もあります。その際に、大勢を一度に指導しようとすると、困っている児童生徒ケアしきれなくなってしまう可能性があるため、少人数にグループ分けをして極力児童生徒に寄り添って細かくケアできるように指導することや、わかりやすい操作マニュアルを用意して見返すことができるようにしておくことが大切です。
その他にも、まずは操作を行ってみて、わからないところがあったら周囲に聞くことのできる環境を作ること*1や、教室で起こった問題を子どもたちが共有して改善していけるような仕組みを作る*2という取り組み事例があります。
通信環境面での、学校のネットワークが遅い、あるいは必要な場所へ十分な帯域が確保できないという問題に対しては、前回もご紹介させていただいた資料「文部科学省 GIGAスクール構想の実現に向けた通信ネットワークの円滑な運用確保に係る対応について(通知)」(外部サイト)に、ネットワークの課題に対する様々な解決策が掲載されています。
また、経済的にICT環境整備が困難な家庭に対しては、学校が貸与するモバイルルータ等の整備支援や低所得世帯への通信費の支援を行っており*3、令和4年度予算では、低所得世帯の高校生、障害のある児童生徒のオンライン学習に係る通信費支援について支援額の充実を盛り込んでいます。*3行政職の皆様は普段からお忙しく、大変な手続きとは思いますが、通信環境の整っていないご家庭へ、モバイルWi-FiルータやUSBドングルの配備するためにも、是非申請いただければと思います。
使用規則・利用制限の決め方については、前回でご紹介したように、児童生徒としっかり話し合ってルールを取り決めることや、最初から厳しく制限をするのではなく、タブレット使用によってトラブルは起こるものだと考えて、使いながら、困ることがあったら解決していくことも大切です。*2その結果として新しい使用規則ができたり、必要のない制限がなくなることで、本当に必要な使用規則・利用制限が残ると考えられます。
子供たちが何を大切と考えているか
児童生徒が端末を使用する際に何が大切かを考えているのかを分析した結果を見てみましょう。(下図)
<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P6
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)>
小学生は使用モラルを大切に考えている児童が多く、発達段階が高くなるにしたがって環境・活用機会の増加を求める児童生徒が増えていることがわかります。
一方で、高校生では使用モラルの割合が低くなっています。高校生になると個人用端末の所持率が高くなり*4、SNSでのトラブルに巻き込まれる未成年の割合は高校生が最も高いというデータも存在します。*5そのため、特にSNSを使用した際等にトラブルに巻き込まれないよう、SNSを使用する際の注意点を教えることも大切です。
また、児童生徒の情報モラルの育成には、以前の記事でご紹介させていただいたデジタル・シティズンシップの考え方が非常に有効です。
「デジタル・シティズンシップのご紹介」でご紹介させていただいた、経済産業省 STEAMライブラリー -未来の教室 にあるデジタル・シティズン教材「GIGAスクール時代のテクノロジーとメディア~デジタル・シティズンシップから考える創造活動と学びの社会化」(外部リンク)が教材として大変優れているほか、文部科学省より公開されている「児童生徒向け啓発資料や情報モラル学習サイト」 (外部リンク) 等をご利用いただくことを検討いただければと思います。
次に、児童生徒が端末を使用する際に何が大切と考えているのかについて、寄せられた意見で頻出する単語を分析した結果を見てみましょう。(下図)
<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P7
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)>
単語分析の結果で、小中学生ではルール設定に関するものが多く、授業、学習のタブレット利用に関する単語が少なかったのが、高校生では逆転しています。高校生の約92%が個人用端末を所持しており*4、調べたいことがあれば自分で調べられるため、この分析結果はそれを反映したものと考えられます。
また、授業、学習のタブレット利用に関するキーワードが高校生で最も多くなっており、小中学生ではルール設定、授業・学習時の利用に関するキーワードを合わせると半数近くになっています。このことから、児童生徒がタブレットをもっと授業等で活用したいという考えや、使用ルールに関しても自分たちの意見を取り入れて欲しいという思いをもっていると考えられます。
本アンケートとは別のアンケートとなりますが、「文部科学省 新学習指導要領が目指す方向性と教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(案)におけるアンケート」(外部リンク)では、「授業でデジタル教科書を使うようになって勉強が楽しいと感じるようになったか」という問いに対し、全ての教科で半数以上がデジタル教科書の利用に肯定的な回答がされています。(下図)
<出典:文部科学省 新学習指導要領が目指す方向性と教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(案) P11
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)>
これらのアンケート結果から、子供たちにできるだけ寄り添うような形で使用規則・利用制限を設定したり、ICT活用をうまく授業に取り入れることで、学習意欲を高められると考えられます。
現在、学校では多くの先生方が授業へICTを取り入れるために、様々な取り組みを行っています。行政職の皆様からも、先生方のICT活用の助けとなるような取り組みをしていただけると、現場の先生方のご負担が減るようにICT活用が促進されるのではないでしょうか。
そのため、本アンケートの「国としての考え方」では、「特別免許状、特別非常勤講師制度を活用した外部人材活用を促す」*6「文科省において、引き続き、多様な外部人材が学校の教育活動に参画するための経費を支援する」*6といった外部人材の活用について、多く記載されており、また令和4年度予算においては、学校現場に対する組織的な支援体制の構築や、各教科等・OSごとの活用方法の整理などによる更なる教師のICT活用指導力向上に向けた取組を盛り込んでいます*7
前述のように、現在学校現場では、先生方が授業でICTを活用するために様々な取り組みや試行錯誤を繰り返しておられます。そんな先生をお助けするために、是非外部人材をご活用いただき、先生方のご負担を減らしながらのICT活用能力向上への取り組みを考えていただければと思います。
ハイパーブレインでは、ICT支援員の派遣を始め、ヘルプデスク等、様々な教育の情報化へのご支援を行っています。外部人材を用いた学校現場へ支援をお考えの場合には、お気軽にお声をかけていただければと思います。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。次回は教職員・保護者のアンケート分析結果からわかることをご紹介させていただきます。
引用
*1 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P45
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)
*2デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P20
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月3日)
*3 文部科学省 令和4年度予算のポイント (PDF:8.4MB)
https://www.mext.go.jp/content/20211223-mxt_kouhou02-000017672_1.pdf P42,P45
(最終閲覧日2022年6月3日)
*4 内閣府 令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)
https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r01/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf P4
(最終閲覧日2022年6月3日)
*5 警察庁 SNS等に起因する被害児童の現状と対策
https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/kentokai/40/pdf/s4.pdf P3
(最終閲覧日2022年6月3日)
*6 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P33
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf(最終閲覧日2022年6月3日)
*7 文部科学省 令和4年度予算のポイント (PDF:8.4MB)
https://www.mext.go.jp/content/20211223-mxt_kouhou02-000017672_1.pdf P14
(最終閲覧日2022年6月3日)
投稿者プロフィール
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株式会社ハイパーブレイン 教育DX推進部所属
教育情報化コーディネータ3級
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