授業目的公衆送信補償金制度を理解しておく必要があります
皆さんこんにちは
「授業目的公衆送信補償金制度」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
2018年の著作権法改正により創設され、2020年4月にスタートした制度です。学校、自治体に大いに関係する制度ですので、詳しく見ていくことにしましょう。
本日は「補償金制度 よくあるご質問(2020年4月)」についてご説明いたします。
新しい制度ですから、知りたいことはたくさんありますね。そう思った人たちから寄せられた質問に対しての回答が掲載されています。
https://sartras.or.jp/seidofaq/
を開いて、ブラウザの検索機能で聞きたいことを検索してみると、既に回答がある質問かもしれません。「どうなんだろう」と思い悩んでいる時間はもったいないので、まずは検索してみましょう。
FAQのページでは回答が4つに分類されています。
1.授業目的公衆送信補償金制度について
2.著作物の利用について
3.運用指針について
4.教育機関の届け出、サンプル調査について
それぞれのFAQの中から特に興味深いものをピックアップしておきましょう。
***************************************:
Q:2021(令和3)年度以降の補償金の額は、どのくらいの金額の見込みでしょうか。これは、高等学校や中学校の生徒数など規模により変動するのでしょうか?いつ頃額は明らかになりますでしょうか?(旧質問番号1-2)
A: 補償金の額は文化庁長官の認可事項ですので、認可されるまでは決まりません。現在、算出の方法の考え方としては、通常の授業の場合、著作物等の種類や授業目的の公衆送信の回数に拘らず児童生徒学生一人当たりの年額を設定したうえで、補償金の算定対象となる人数を乗じる方式とする方向で検討しております。認可申請は、本会の希望としては2020年夏には行いたいと考えています。
(2020.5.10 一部変更)
https://sartras.or.jp/seidofaq/ より引用
**************************************
認可額は2021年2月現在既に決定されています。
意見聴取の結果の授業目的公衆送信補償金の額への反映状況
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/ikenchosyukekkanogakuhenohaneijokyo.pdf P2より引用
児童生徒、学生一人当たりの金額で算出することになっています。設置母体が一括で支払うので、基準日となる日の人数となります。
*************************************
Q:この制度でどのような著作物が利用できるのですか。外国の著作物も対象ですか(旧質問番号2-1)
A:この制度では、国内外のすべての著作物が対象となります。「一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS)に参加していない権利者団体が管理する著作物や権利者団体に所属していない者が権利を有する著作物も対象です。
https://sartras.or.jp/seidofaq/ より引用
************************************
「すべての著作物」が対象となっていると明記されています。SARTRASに参加していない権利者団体が管理する著作物や、権利者団体に所属していない者が権利を有する著作物も対象ということですね。著作権者の利益を害さない程度で、著作物を公衆送信することができるようになるということはとても便利になります。
ところが、ここに注意するべきFAQがあります。
*************************************
Q:教育委員会がこの制度を利用して、著作物を公衆送信することはできますか(旧質問番号2-4)
A:この制度の対象となる主体は、改正著作権法第35条第1項において「教育を担任する者及び授業を受ける者」と規定されています。このため、個々の教員や児童生徒等ではなく、教育委員会等の組織が主体となる場合は、この制度の対象外となり、権利者の許諾を得る必要があります。なお、新型コロナウイルス感染症対策による休校期間の学習のための著作物利用については、著作権者が特別の配慮をしている場合もありますので、関係の著作権等管理事業者等にお問い合わせください。
*************************************
学校主体なのか、教育委員会主体なのかで大きく変わるということが書かれています。
教科書著作権協会のホームページトップにも、学校教育の場合と教育委員会の場合とが分かれて明記されています。新型コロナウイルス蔓延に伴う休校時の措置として、教科書を使った動画を撮影しようとした場合、教育委員会主導なら教科書著作権協会に許諾を得る必要があったわけですね。
著作権に関しては非常に線引きが難しいものです。安易に判断せず、確認して、正しい利用をしていく必要があります。そうでなければ、誰も何も生み出してくれなくなってしまうからです。自分だけがタダで利用できたらいいや、というような安易な考えでは、文化は死にます。作者に敬意と、適切な報酬がなければなりません。
次回は、FAQの続きを見ていきます。
投稿者プロフィール
-
株式会社ハイパーブレインです。
教育の情報化に貢献し,豊かな会社と社会を作ります。
最新の投稿
- HBI通信2022年2月21日令和の日本型教育とは38
- HBI通信2022年2月14日令和の日本型教育とは37
- HBI通信2022年2月7日令和の日本型教育とは36
- HBI通信2022年2月3日令和の日本型教育とは36