教育振興基本計画15
皆さんこんにちは。
令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。
そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。
特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。
本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。
Ⅲ.今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方
(2)教育投資の在り方
(「未来への投資」としての教育投資の意義)
「教育・人材育成を通じた「人への投資」は成長への源泉」と計画にはあります。教育に携わる人は、これを基本原理として動いている人がほとんどだと思いますが、教育は、明日成果が目に見えるものではありません。ですが、教育への投資は、20年後の社会を必ず豊かにします。
計画では「創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」にほかならない。人への投資を通じた「成長と分配の好循環」を生み出すためにも、教育への効果的な投資を図る必要がある」とあります。
投資は、国や自治体など公的機関が行うものと同時に、計画には「寄付」の文言があります。
ただ、寄付をあてにするのではなく、きちんと国家として教育に投資をしていくことは重要です。「社会全体で教育を支える環境を醸成」という計画の言葉通り、社会全体の理解が必要ですね。
(第3期計画までの教育投資の状況)
第3期計画期間での投資状況が述べられていましたので、以下に箇条書きで抜き出します。
主として教育費負担の軽減としては3つです。
- 幼児教育・保育の無償化
- 高等学校等就学支援金による授業料支援
- 高等教育の修学支援新制度の創設
その他財政が厳しい中投資したと述べられているもの
- 1人1台端末と高速通信ネットワーク等の ICT 環境の整備
- 小学校における 35 人学級の計画的整備
- 高学年教科担任制の推進
- 支援スタッフの充実
- 博士後期課程学生に対する経済支援の拡充
- 学校施設の耐震化の推進
様々な投資が行われてきたとあります。
その次に、国際的比較がなされています。様々な国の背景事情があるということは前提ですが、数字で見ると日本は、他の国に比べて教育に関する投資が低いと出ています。
公財政教育支出総額GDP(国内総生産)比(初等教育段階から高等教育段階)(2019年度平均)
OECD 諸国:4.4%
日本: 3.0%
在学者一人当たりの公財政教育支出額(初等教育段階から高等教育段階)(2019年度平均)
OECD 諸国: 10,161 ドル
日本: 8,944 ドル
出典:図表で見る教育2022 日本語版、最新版もわかる文部科学省のページはこちら 図表でみる教育(Education at a Glance)OECDインディケータ
租税負担率(対 NI(国民所得)比)
OECD 諸国: 35.4%
日本: 25.8%
教育は人を育てるためにあります。また、今後、どのようなことが必要になるのかという先のことは見通せません。「将来必ず将棋で物事が決められるようになるから、将棋に強い子供を育てるために、将棋に予算を回そう」というのはとてもびっくりする仮説です。これを国を挙げて推進しようということにはきっとなりません。将棋だとあれ? と思うのに、これが科学技術の何かだと「その技術に絞ろう。ほかの分野の予算をそちらに回そう」になるのが不思議です。
幅広く、できるだけ多くの国民が様々な教育を受けることで、何かが発展します。何か、というのがわからないので幅広く、様々、ということが必要になります。三角関数が人生で何の役に立つんだ、ということについてはSCRATCHでゲームを作って遊んでいる子どもたちに十分役に立っていますし、相対性理論はGPSに欠かせない技術だということは言われて久しいことです。
繰り返しになりますが、教育は未来への投資です。できるだけ多くの人にできるだけ様々な教育を受ける機会を作ると、豊かな国の土壌がはぐくまれます。そこから芽が出て伸びるものがある、というイメージで教育を考えていきたいものです。
来週は教育振興基本計画Ⅲ.(2)教育投資の在り方 本計画期間における教育投資の方向性を読んでいきます。
投稿者プロフィール
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株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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