教育の情報化ビジョン 3本柱の1つ「校務の情報化」
皆様こんにちは。本日は「教育の情報化ビジョン」3本柱の3本目、校務の情報化についてお話しします。
さて、「校務を情報化する」と聞くと、どういうことを想像されますか? 最初に教育の情報化ビジョンで挙げられているのは「情報通信技術を活用した教職員の情報共有によるきめ細かな指導」です。次が「校務負担の軽減」。もしかしたら「校務負担の軽減」の印象が強いかもしれませんね。ですが、校務支援システムの普及での最も大きなメリットは「教職員の情報共有」が容易になるということなのです。
校務支援システムでは「導入範囲では同じことを同じように登録する」ことになります。これがものすごく大きな情報共有のメリットなのです。どこにどのようなものが登録されているか誰かに聞かないでもわかるメリットをご想像頂けますでしょうか?
例えば、「全校生徒の名簿を共有して、気づいたことがあれば書き込んでいこう」という方針に対し、excelで情報共有をすることももちろん素晴らしいことです。ですが、そのexcelをどこにおいて、どのように誰が更新するのか、どういう視点で記載するのか、関わる人全員が理解しておかないと「開きっぱなしは誰!」という事態に陥りかねません。(なぜなら日本の教職員は世界一忙しいからです。OECD国際教員指導環境調査(TALIS)によると日本は週54時間仕事(指導ではないもの。授業以外の主に校務)を行っていますが、調査参加国平均は38時間なのです。)
その点、校務支援システムは「システム内のここに入力してください」というだけでよいですし、誰かが入力中なのを待つ必要もないのです。担任一人の目ではなく、校内のほかの教職員が「A君は花壇に落ちていたごみを拾っていた」場面を目撃してそこに書き込んでおけば、担任は保護者にそれを伝えることができます。保護者はどれほど喜ぶでしょうか。
また、成績についても「ここを見れば必ず前年度、さらにその前の記録もわかる」状態であることは評価を行う上でとても重要な要素であることはお分かりいただけますでしょうか。最終的に通知表になる前の段階で、どのように評定を行っていたか、自分の考えだけではなく前の担任の状態も確認しつつ評価できるというのは評定の経験が少ない教員はもちろん、今まで数多く評定を行ってきた教員も常に確認を行いながらできるという点でとてもメリットが大きなことです。
多忙な中、現場はそれぞれ個人の創意工夫で情報共有を行ったり、情報の引継ぎを行ったりしてきました。ですが、校務支援システムによって情報共有の標準化が図られ、「人が入れ替わったらシステムの構築しなおし」をする手間が大幅に軽減され、本来の目的である「情報共有」に重きを置くことができるのは計り知れないメリットです。
ここで申し上げた「標準化」については教育の情報化ビジョンでも取り上げられています。「共有すべき教育情報の項目、データ形式等の標準化を推進」するとあります。そう聞くと特色ある教育ができなくなるのでは、という心配が頭をもたげてきますが、没個性の推進のためではなく、より独自色のある教育を行うための土台が作られる、とお考えいただけるとよいと思います。土台である共有すべき教育情報の項目がしっかりと教職員に理解されていれば、「その上のプラスアルファ」も明確になります。「外国語教育に力を入れよう」だけではなく「外国語教育のうちこの部分はしっかりできているから、こちらの部分をさらに伸ばそう」という議論は非常に建設的ですね。
その上で、校務で必要なことが標準化され、手順化され、現場が「この書類をどう作ったらいいかわからない」と悩む時間が減るのは校務支援システムの非常に大きなメリットです。校務の情報化が進めば、最終的にはもちろん教職員の時間ができる、ということができますが、それが実現される過程で行われる「標準化」は保護者にも子どもたちにもとても重要で効果的なことです。行政職の皆様にこのポイントを押さえていただければ現場も教育委員会もとても仕事がスムーズになるのでは、と思っております。それを最も享受できるのは子どもたちだというのは想像に難くないでしょう。
3回に分けて教育の情報化ビジョンの3本柱をご紹介してまいりました。この3つを推進することで日本の教育をよくしていこう、という方針になります。
次回はこれらを踏まえて、教育の情報化ビジョン内の具体的な提示についてご説明いたします。
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